【農業リモートセンシング】AgEagle社　MicaSenseシリーズのセンサにおける科学的原理とは

2023/04/18

・はじめに
・マルチスペクトルセンシングの機能について
・マルチスペクトルセンサの誕生
・マルチスペクトルセンサが農業分野へもたらすメリット
・正規化植生指数について
・クロロフィル含有量について
・データの処理について
・問い合わせ

はじめに

AgEagle社のMicaSense(マイカセンス)ブランドでは、高解像度の写真を提供するだけではなく植物育成における課題を解決するような科学的ソリューションの提供を方針としています。
ここでは、そんなMicaSenseブランドの信念と製品を支える科学的な原理の一部をご紹介します。

マルチスペクトルセンシングの機能について

まず、太陽光や照明が農作物や物体などに当たり返ってくる光（電磁波）には、複数の波長の光が含まれます。この複数の波長の光（電磁波）を記録した画像をマルチスペクトル画像と呼びます。 マルチスペクトルセンシングとは、このマルチスペクトル画像を用い、農作物（植物）の育成状態を調べる技術です。マルチスペクトルセンシングでは、人間の目で見ることが可能な可視光線のみならず、赤外線や遠赤外線なども同時に画像化して利用することがあります。

植物は、成長段階・ストレスの度合い・病気などの要因によって各波長の光の反射率が異なり、マルチスペクトルセンシング技術では、この反射率の違いを利用して測定します。

マルチスペクトルセンサの誕生

これまで、マルチスペクトルデータの取得には有人航空機を利用するか、衛星が上空を通過するのを待つしかありませんでした。どちらも自由度が低く、解像度にも限界があります。さらに悪天候がデータに影響を与えることもあります。

しかし、近年の産業用ドローン産業の急速な拡大により、誰でもマルチスペクトルセンサを植物の上空に飛ばして、低解像度の大まかな分析だけでなく植物個体レベルのストレスまで迅速に特定することができるようになりました。つまり、適時圃場を空撮して問題箇所を特定し、迅速かつ効果的に調査を行うことができるようになったのです。

製品ラインナップ (画像をClick!)

マルチスペクトルセンサが農業分野へもたらすメリット

農作物を頻繁且つ高解像度でマルチスペクトル画像化できるようになったことで、精密農業の業界は大きく変わりつつあります。
ドローンを使ったマルチスペクトル画像の分析により、一見青々とした健康な畑でも、ストレスや病気の発生、栄養不足のある場所をピンポイントで特定することができるようになりました。

このように問題のある領域を絞り、それに応じた対策を行うことで、生産者は効率・収量・利益を向上させることができるのです。

正規化植生指数について

正規化植生指数（NDVI）とは、植生の有無・活性度を表す指数で、1.0～0.0の数値に正規化されたものです。高値は、高い植物活性を示します。

AgEagle社のMicaSenseのマルチスペクトラルカメラでは各バンドの反射率を捉えた後、NDVI値を計算し、植物の健康状態を把握します。
植生指標は、植物がある帯域で反射する光と、別の帯域で反射する光を比較することで機能します。先述したNDVIは、赤色帯の反射率と近赤外帯の反射率を比較するものです。

指数にはNDVIの他にも種類があり、特にNDVIは植物の「健康度」や「葉の茂り具合」に着目しています。このとき、「元気＝病気がない」と誤解されることがあります。これは非常に重要な誤りであり、病気を効果的に発見し治療するか、それとも蔓延させるかの分かれ道となります。よって、他の指標も活用し様々な視点から植物を観察することが大切です。

クロロフィル含有量について

植物の健康状態を正しく評価するためには、葉緑素(クロロフィル)の含有量を考慮することが有益であることが多くの研究によって明らかにされています。クロロフィル量を測定するためには、特定の光の帯域を使用する必要があります。AgEagle社のMicaSenseシリーズのカメラに搭載されているレッドエッジバンドは、赤と近赤外の間にある非常に狭帯域の特定の波長帯です。このレッドエッジバンドが、クロロフィルの含有量推定に利用されます。他の帯域と組み合わせて適切に分析すれば、レッドエッジバンドのような波長帯は、植物の健康状態をより正確に測定し、生産者の収益にメリットを与えることができます。