お問い合わせお問い合わせ
ダウンロード資料
ダウンロード

ジェピコメディア

  1. TOP
  2. ジェピコメディア
  3. X-Spectrum 科学
  4. X線検出器「AEON」が放射光計測を革新 Timepix4が実現するナノ秒分解能とイベント駆動計測

X線検出器「AEON」が放射光計測を革新 Timepix4が実現するナノ秒分解能とイベント駆動計測

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
X線検出器「AEON」が放射光計測を革新 Timepix4が実現するナノ秒分解能とイベント駆動計測

「より高速な現象をX線で捉えたい」
「時間分解能を向上させたい」
「まばらなデータを、より効率よく取得して、容量を減らしたい」

放射光施設やシンクロトロン実験、材料解析などでは、測定対象の高速化・微細化に伴い、 X線検出器にもこれまで以上の時間分解能、空間分解能、感度が求められています。

しかし、一定時間ごとに画像を取得する従来のフレームベース検出器では、 非常に短い時間で起こる現象を捉えることや、光子一つひとつの到着時間を記録することが難しい場合があります。 さらに、測定条件によっては、ほとんどのフレームがX線の検出されていない領域で占められるため、不要なデータが大量に生成されます。

■目次
 

▼従来のX線検出器が抱える課題

X線計測で、このような課題はありませんか?

高速化・高精度化する研究や検査では、従来のX線検出器だけでは
十分な情報を取得できない場合があります。


高速現象の捕捉制限


従来のフレームレートでは、ナノ秒からマイクロ秒単位で変化する現象に制限がかかってしまう。

疎なデータにより
大容量ファイルに


変化が起きていない時間も画像として保存されるため、無駄なデータが保存されてしまう。

光子エネルギーだけで、異なる現象を識別不可


複数の現象が同時に起こる場合、光子エネルギーだけでは個別の現象を識別することができない。

AEONなら、光子単位のイベント計測と高速フレーム撮影の両方で解決!

▼AEONとは? Timepix4搭載の次世代X線検出器

AEONは、ドイツのX-Spectrum社が開発した、Timepix4読出しチップ搭載の大面積X線検出器です。

高い空間分解能、感度、測定速度が求められる実験向けに設計されており、光子を一つずつ検出するPhoton Counting方式を採用しています。

読出しチップ Medipix4 Collaborationが開発したTimepix4
ピクセルサイズ 55 µm
データ取得モード Event-drivenモード/Frame-basedモード
Event-drivenモード 各光子のToAとToTを記録し、ナノ秒レベルの時間分解能と光子エネルギー情報を同時に取得
Frame-basedモード 最大40 kHzの高速フレーム取得
カウンター深度 8bit、16bitから選択可能
対応センサー材料 Si、GaAs、CdTe、(CdZnTe:近日公開)

AEONの大きな特長は、「光子一つひとつを記録し、無駄なデータを省くEvent-drivenモード」と、「従来の撮影を超高速で実現するFrame-basedモード」を備えていることです。

測定対象や実験目的に合わせてモードを使い分けられるため、 高速現象の時間解析から高精細なX線イメージングまで、幅広い用途に対応できます。

▼Event-drivenとFrame-based、2つの測定モード

AEONは、異なる特長を持つ2つのデータ取得モードを搭載しています。

AEONのEvent-drivenモードの仕組み

<光子が入射した瞬間だけデータを生成>

Event-drivenモード

Event-drivenモードでは、X線光子がセンサーに入射するたびに、 その光子を一つのイベントとして記録します。

 Event-drivenモードは、 変化が起きた瞬間だけ記録する防犯カメラのような仕組みです。

光子ごとに、主に次の情報を記録します。

  • いつ届いたか:ToA(Time of Arrival)
  • どこに届いたか:ピクセル位置情報
  • どの程度のエネルギーか:ToT(Time over Threshold)

不要なデータを抑えながら効率よく記録できます。

さらに、光子ごとの時間情報が保持されるため、 測定後の解析で任意の積算時間や解析窓を設定できます。

AEONのFrame-basedモードの仕組み

<一定時間ごとにX線画像を取得>

Frame-basedモード

Frame-basedモードは、一般的なデジタルカメラのように、ユーザーが設定した露光時間ごとに画像を取得するモードです。

AEONでは、最大40 kHzの高速フレーム取得に対応。理論上は1秒間に最大4万フレームを取得できるため、高速で変化する現象を連続画像として観察できます。

また、測定条件や必要な計数範囲に合わせて、カウンター深度を選択できます。

  • 8bit
  • 16bit

X線イメージング、CT、材料内部の観察、電子部品の検査など、画像としての分かりやすさと連続性を重視する用途に適しています。

2つのモードの比較

比較項目 Event-drivenモード Frame-basedモード
記録方法 光子が検出されたときにイベントを記録 設定した露光時間ごとに画像を記録
取得情報 到着時間、位置、ToT情報 各ピクセルの光子カウント
時間解析 光子単位の詳細な時間解析に適する フレーム単位の時間変化観察に適する
データ量 疎なデータでは効率的に圧縮可能 すべてのフレームを画像として取得
主な用途 XPCS、バンチ構造測定、ポンププローブ実験 X線イメージング、CT、材料・電子部品検査
測定後の解析 任意の時間窓を設定しやすい 取得時に設定したフレーム条件を使用

複数モジュールで構成されるAEONでは、Event-drivenモードとFrame-basedモードを組み合わせて、両方のデータを同時に取得することも可能です。

これにより、光子ごとの時間・エネルギー情報と、視覚的に分かりやすい画像情報を組み合わせた高度な解析に対応できます。

▼ナノ秒レベルの時間分解能が可能にする高速計測

 

AEONのEvent-drivenモードでは、8.6 keVのX線に対して、8.423 ns FWHMの時間分解能が実証されています。

8.423 nsは1/120,000,000=約12億分の1秒に相当します。光がこの時間に進む距離は約2.5 mであり、AEONはそれほど短い時間差を識別できる性能を持っています。

この高い時間分解能により、従来のフレームベース検出器では観測が難しかった非常に高速な現象の解析が可能になります。

  • シンクロトロンのバンチ構造測定
  • ポンプ・プローブX線実験
  • マイクロ秒以下の試料ダイナミクス解析
  • 光子到着時間に基づく時系列解析

ToAとToTを同時に取得

AEONは、光子の到着時間を示すToAだけでなく、信号がしきい値を超えていた時間を示すToTも同時に記録します。

ToTは、入射したX線のエネルギーに関連する情報として利用できます。そのためAEONでは、時間情報とエネルギー情報を組み合わせた スペクトラルイメージングが可能です。

さらに、ToTスペクトルから1光子イベントだけでなく、2光子・3光子によるマルチフォトンイベントを識別できることも示されています。 これにより、高強度X線環境における測定可能範囲の拡張が期待できます。

▼用途に応じて選べるセンサー材料

AEONで選択可能なSi、GaAs、CdTe、CdZnTeセンサーのX線吸収効率

AEONは、測定するX線エネルギーや用途に応じて、複数のセンサー材料を選択できます。

Si

低いエネルギー領域のX線測定に適したセンサー材料。

GaAs

Siよりも高いエネルギー領域で高い吸収効率が求められる用途に最適。

CdTe

硬X線領域で高い吸収効率が求められる用途に最適。

CdZnTe*開発中

より高エネルギーX線の検出に最適


軟X線から硬X線まで、対象となるエネルギー領域に合わせてセンサーを選択できるため、一つの用途に限定されず、さまざまな研究・分析・検査に適用できます。

▼実証された主要アプリケーション

AEONは、放射光施設や研究機関において、時間分解・エネルギー分解を必要とする 複数のX線測定で性能実証済みです。

AEONを使用した超高速XPCSの測定例

1 µs以下の試料ダイナミクスを測定

超高速XPCS

XPCS(X-ray Photon Correlation Spectroscopy)は、X線散乱パターンの時間変化から、材料内部の微細な動きを解析する技術です。

AEONは、高い時間分解能を活かし、サブマイクロ秒(1µs未満)の時間スケールで試料のダイナミクスを測定できます。Event-drivenモードでは、光子ごとのイベントデータをフレーム画像へ変換することなく直接解析できるため、データ量を抑えながら高速に相関関数を算出できます。

実際に、水中に分散した粒径100nmのシリカ粒子を測定した結果、粒子の運動が理論どおりのブラウン運動に従うことが確認され、高速な材料解析への有効性が実証されました。

AEONを使用したレーザーポンプ・X線プローブ実験の測定例

レーザー照射後の高速変化を観測

ポンプ・プローブX線実験

ポンプ・プローブ測定は、レーザーなどで材料に瞬間的な刺激を与え、材料内部の変化に伴うX線散乱パターンの時間変化を観察する測定手法です。

AEONのEvent-drivenモードでは、フェムト秒レーザーを照射したSrRuO₃のひずみ変化を高時間分解能で観測し、レーザー照射直後の急激な変化から、その後のナノ秒スケールでの回復過程まで捉えることができました。

さらに、光子ごとの到着時刻を記録するため、取得したデータは測定後に任意の時間幅で解析できます。実験中に複雑なゲート設定を行う必要がなく、複数の時間窓を自由に設定して解析やデータの正規化を行える点も大きな特長です。

AEONによるスペクトラルイメージングの測定例

画像とX線エネルギー情報を同時に取得

分光イメージング

AEONは、ToA(到着時刻)とToT(エネルギー情報)を同時に測定できるため、高い時間分解能を維持したまま分光イメージングを実現します。

従来のX線画像では物体の形状を確認することが主な目的でしたが、AEONではX線のエネルギー情報も同時に取得できるため、材料ごとの違いを識別しやすくなります。これにより、画像コントラストの向上や、CT撮影時に発生するビームハードニングによる画像の歪みを補正するアルゴリズムへの応用が可能です。

実証試験では、プリント基板(PCB)の透過X線画像とともに、透過したX線のエネルギースペクトルを取得し、画像情報とエネルギー情報を同時に取得できることが示されました。

そのほかに期待される用途

  • 放射光施設・シンクロトロン施設での高速X線計測
  • 材料内部の構造・動態解析
  • 半導体、基板、電子部品の非破壊検査
  • X線CTおよびエネルギー分解CTの研究
  • 高強度X線を使用する実験
  • 時間分解・エネルギー分解イメージング

▼AEONが選ばれる理由

高速計測と高品質イメージングを、1つのシステムで

AEONは、時間・位置・エネルギー・画像という複数の情報を取得できる柔軟なX線検出器です。


Timepix4搭載

55 µmピクセルと高い時間分解能を備えたTimepix4読出しチップを採用しています。

2つの測定モード

Event-drivenとFrame-basedを、実験目的や解析方法に合わせて選択できます。

光子単位の情報取得

光子ごとにToA、位置、ToTを記録し、時間とエネルギーを組み合わせて解析できます。

最大40 kHz

Frame-basedモードでは、高速で変化する現象を連続画像として取得できます。

測定後の柔軟な解析

Event-drivenデータから、実験後に任意の積算時間や解析窓を設定できます。

マルチセンサー対応

Si、GaAs、CdTe、CdZnTeから、測定エネルギーに適したセンサーを選択できます。

▼よくあるご質問

▼まとめ

AEONは、Timepix4読出しチップを搭載し、Event-driven計測と高速Frame-based撮影の両方に対応したX線検出器です。

Event-drivenモードでは、光子ごとの到着時間、位置、ToT情報を記録し、ナノ秒レベルの時間解析やエネルギー情報を利用した測定が可能です。また、測定後に任意の解析窓を設定できるため、実験条件に縛られにくい柔軟な解析を実現します。

Frame-basedモードでは、最大40 kHzの高速フレーム取得に対応し、X線イメージング、CT、材料観察、電子部品検査など、画像を重視する用途にも使用できます。

さらに、Si、GaAs、CdTe、CdZnTeといった複数のセンサー材料に対応しており、軟X線から硬X線まで、測定条件に合わせたシステム構成が可能です。

高速な時間変化、X線のエネルギー分布、高精細な画像を一つのシステムで取得したい場合、AEONは新しいX線計測の可能性を広げる有力な選択肢となります。


担当者:市川

メール:r_ichikawa@jepico.co.jp

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加