AGV・AMRの物体認識精度を向上|Q-Vision F540によるインフラ検知・棚認識・衝突回避【第4回】

1. AGV・AMRの物体認識における現状の課題
AGV・AMRが自律走行するためには、ナビゲーション(自己位置推定)と物体認識(周囲把握)の両方が必要です。従来の2Dセンサーはナビゲーションには一定の効果がありますが、物体の形状・高さ・奥行きを把握する能力に乏しく、以下のような問題が残っていました。
- パレットのストリンガー(桁)位置を正確に認識できない
- 棚の角(コーナー)とフォーク爪の位置合わせが難しい
- 棚からはみ出した荷物を検知できずに衝突
- 低身長の子供やしゃがんだ作業者を検知できない
- 薄暗い倉庫や外光の強い荷受けエリアでカメラ性能が劣化
F540はこれらの課題を3D点群と独自のオンセンサー処理で解決します。
2. ユースケース①:パレット検知と荷重センシング
🚜 パレットストリンガー検知 / 荷重の有無と重心位置の把握
AGVがパレットをフォークでピックアップする際に重要なのが、ストリンガー(桁)の正確な位置です。ストリンガーの中心にフォーク爪が入らないと、フォーク爪がずれてパレットの損傷や落下が発生します。
F540では3 m先のストリンガーを点群で正確に識別できるため、それに基づいて位置・傾き・奥行きを算出することでAGVへフィードバックが可能になります。また、フォークに荷物が乗っているかどうか、爪のどの位置まで荷物が来ているかという「荷重位置」も同時に把握でき、不均等な積み付けによる転倒リスクを事前に検知します。
- ストリンガー検知距離:最大3 m
- 必要な水平角度分解能:0.2°以下 → F540は 0.14° で対応
- フォーク荷重の有無・位置:搭載アプリで自動判定
- パレット下の障害物検知:CLiff Detectionアプリと組み合わせて対応
3. ユースケース②:棚コーナー・インフラの高精度認識
🏪 棚コーナーの認識(AMR向けインフラ検知)
棚を使った物品保管では、AMRが棚コーナーの正確な位置を把握することが重要です。棚の角の位置がずれて認識されると、フォーク爪が棚柱に当たったり、荷物を引きずってしまう恐れがあります。
F540は3 m先の棚コーナーを 水平5 cm / 垂直7 cm の精度で認識。これは要求される0.2°以下の水平解像度をF540の0.14°が十分に満たすことで実現されます。棚の角の識別だけでなく、棚内部の物体(パレット・ボックス)の有無や位置も把握できます。
🤖 サービスロボット向け:椅子・テーブル脚の認識
飲食店・病院・施設内でサービスロボットが活動する場合、椅子や机の脚、棚の下部コーナーなど、細い物体・低い物体の認識が課題です。
F540は1.5 m距離で 水平2.5 cm / 垂直3.5 cm という精度で椅子・テーブル脚を識別できます。また、フレームレートと最大/最小測定距離をリアルタイムに調整できる機能(On-the-fly Frame Rate and Range Adjustment)により、動きの多い環境でも常に最新のマップを維持します。
- 1.5 m距離:水平2.5 cm / 垂直3.5 cm
- フレームレート・測定範囲のオンザフライ調整対応
- 要求解像度(0.2°以下)に対してF540は0.14°で余裕を持って対応
4. ユースケース③:棚からのはみ出し・至近距離物体の検知
⚠️ 棚からはみ出した荷物・AMR直前の落下物の検知
AMRが棚に沿って走行する際、棚の奥まで積まれた箱のはみ出しや、停止後に何かが前に転がってきた場合など、「今この瞬間の至近距離の状況」をリアルタイムに把握する必要があります。
F540は以下のような検知をリアルタイムに実行します。
- 棚から突き出した物体・ボックスの高さのばらつき検知
- AMRのリフト機構そのものの位置確認(リフトの上昇高さを点群で把握)
- 停止後に前方に転がってきた物体の検知(衝突回避との連携)
これにより、AMRが走行中だけでなく 停止直後の死角での衝突も防止します。
5. ユースケース④:人・物体の混在環境での認識
🧑🤝🧑 人との共存:RGB + LiDARオーバーレイ
AGV・AMRが人と同じ空間で安全に稼働するためには、「人」を確実に検知することが最優先です。F540はRGBカメラとLiDARの点群を重ね合わせることで、色・形・距離をすべて統合した認識が可能になります。
実際の利用シーンとして、以下のような検知が実証されています。
- 6 m 先の床に横たわっている人の検知(遠壁8 m との区別)
- 影の中にいる人の検知(暗所でもアクティブIRで認識)
- LiDARの点群とRGBカメラ映像を同一座標系で重ね合わせてディスプレイに表示
人の検知においては、点群上で「人らしい形状」を自動判定し、安全停止のトリガー信号をGPIO経由でAGVのPLCに即時送信します。F540の 60 fpsのリアルタイム処理により、1フレームあたり16 msという高速応答が可能です。
6. ユースケース⑤:箱寸法・ラベルの同時認識
📦 箱の寸法計測 + ラベル(バーコード・QR)読み取りの統合
物流仕分けシステムでは、荷物のサイズ把握と荷物に貼られたラベル・バーコードの読み取りを同時に行う必要があります。従来は3Dカメラと別途バーコードリーダーを組み合わせる2センサー構成が必要でしたが、F540はこれを1台で実現します。
- 3D LiDAR部:箱の長さ・幅・高さを自動計測(Dimensioningサンプルアプリ)
- RGBカメラ部:LiDARより高解像度の2MPカメラでラベル・バーコード・QRコードを読み取り
- 統合出力:寸法データとラベルデータを同一タイムスタンプで出力
| 方式 | 必要なセンサー数 | 高さ計測 | ラベル読み取り |
|---|---|---|---|
| 従来の光カーテン(2D) | 複数台 | 不可 | 別途スキャナが必要 |
| F540(3D) | 1台 | 可能 | 同一センサーで対応 |
7. まとめ
Q-Vision F540は、AGV・AMRが自律的かつ安全に動作するために必要な物体認識——パレット検知・棚コーナー把握・はみ出し物体検知・人との共存——をすべてカバーします。センサーの導入から実用までの開発工数も、提供サンプルアプリとROSなどのAPIで大幅に短縮できます。

次回第5回(最終回)では、ロボットそのものの視覚情報精度を高める「崖検知」「危険区域対応」「RGB-LiDAR融合によるAI推論」について詳しく解説します。
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