強力な消毒剤でも安心して使える医療機器向けパネルマウントキーボード「CliniKey™」とは

医療現場では「しっかり消毒できること」と「入力ミスを起こしにくい操作感」を同時に満たす入力デバイスが求められます。 ところが実際の製品設計では、清掃性を優先すると打鍵感が犠牲になり、操作性を優先すると消毒剤や液体侵入に弱い――というトレードオフが起きがちです。
本記事では、医療機器メーカー/医療機器向けOEMの設計担当者向けに、現場の実情と課題を整理しつつ、Grayhillのパネルマウントキーボード「CliniKey™」がなぜ検討対象になり得るのかを、初心者にもわかりやすく解説します。
医療機器の現場で、入力デバイスに起きていること
医療機器は、診療・検査・処置のワークフローの中で「手が止まらない」ことが最重要です。 その一方で、感染対策として日々の清拭・消毒は避けられません。アルコール系、塩素系、各種ワイプなど、施設や部署によって使用する薬剤や頻度は異なりますが、 入力デバイスは“毎日何度も”薬剤にさらされる消耗部位になりやすいのが現実です。
さらに、手袋着用・湿った手・暗い環境(夜間病棟、検査室、手術室周辺)など、操作条件が厳しい場面も多く、 キーボードやキー入力部が曖昧だと、入力ミスや再入力の手間が増え、結果として作業効率や安全性にも影響します。
- 「消毒は必須。なのに印字が消える/表面が劣化する」
- 「隙間に汚れが残るのが不安」
- 「入力が重い・浅いと、手袋だと押し間違える」
- 「清掃中に誤入力が入ってアラームが鳴る」
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なぜ「医療用キーボード」は設計課題になりやすいのか
1) 清掃性と操作性がトレードオフになりやすい
防滴・防塵を強めるほど、構造は密閉寄りになり、キーのストロークやクリック感(フィードバック)が損なわれる設計もあります。 逆に、打鍵感を良くすると、隙間・段差・開口が増え、清掃性や液体侵入リスクが増えることがあります。
2) 薬剤耐性は“素材劣化”として後から効いてくる
消毒剤への耐性は、短期テストでは問題がなくても、繰り返しの清拭で表面が白化・べたつき・割れ・印字消失といった形で顕在化しやすいです。 入力部が劣化すると、操作性だけでなく外観品質やメンテナンスコストにも跳ね返ります。
3) 医療機器は規格・評価・変更管理の負担が大きい
たとえばIEC 60601系の要求事項に絡む部品を後から変更すると、影響範囲の再評価が広がることがあります。 そのため設計段階で「最初から医療用途を想定した入力デバイス」を選ぶことが、手戻りリスク低減につながります。
本製品が必要とされる理由
「医療機器向け入力デバイス」を部品選定の観点で分解すると、要件は大きく次の5つに整理できます。 CliniKey™は、これらの要件を同時に満たすことを狙ったパネルマウント型キーボードとして位置付けられます。
薬剤耐性(消毒剤・ワイプ)
清掃性(隙間・段差を作らない)
防塵防滴(侵入保護)
操作性(フルストローク・触覚フィードバック)
医療規格対応(評価負担の軽減)
要点:医療現場では「壊れにくい」だけでは不十分です
重要なのは、消毒運用に耐えながら、入力精度と作業効率を落とさないことです。 つまり「清掃しやすいからOK」でも「打鍵感が良いからOK」でもなく、両方が必要になります。 この両立が難しいため、医療機器開発では入力デバイスが“最後まで悩みどころ”になりやすいのです。
CliniKey™ 製品紹介:特長と仕様の要点
CliniKey™(Grayhill社)は、医療機器への組込みを想定したパネルマウント型の医療グレードキーボード/テンキーです。
- QWERTY(77キー) + 5×6のナンバーキーパッド(27キー)の構成
- USB-C接続で一般的なUSB HIDキーボードとして動作(専用ドライバ不要)
1) 消毒剤に強いシリコーン表面(薬剤耐性を前提に設計)
表面は薬剤耐性を意識したシリコーン素材で、医療現場で使われがちな消毒剤・ワイプへの耐性試験を前提に設計されています。
これは「清拭頻度が高い」医療用途で大きな安心材料になります。
例:イソプロパノール、エタノール、塩素系、クロルヘキシジン、グルタルアルデヒド、各種市販ワイプ等(詳細は評価リストを要確認)
2) パネルに組み込むとIP67相当の密閉を狙える
“パネルに取り付けた状態”でIP67レベル(侵入保護)を謳っており、消毒スプレーや不意のこぼれに対して内部電子回路を守る設計思想です。 医療機器では筐体の継ぎ目・開口部からの侵入が故障原因になりやすいため、パネルマウントで密閉性を取りにいくのは合理的です。
- 防水等級は「取り付け状態」や「筐体側の設計」に大きく依存します。
※清掃手順「ワイプでの清拭」が基本です。
3) 触覚フィードバックのあるフルストロークキー+高耐久
1,000万回/キーの耐久性があり頻繁な入力にも耐える設計です。
更に「フルストロークで押した感触が分かる」ため、手袋着用時の入力ミス低減にも寄与が期待できます。
4) 清掃時の誤入力を防ぐ「キー・ロックアウト(Clean機能)」
清掃中にキーが反応して画面遷移・設定変更・アラーム発生などが起きると現場のストレスが増加します。
CliniKey™は一定時間の長押しで入力を無効化する仕組み(Clean機能)を用意し、清拭作業をスムーズに終了させることが可能です。
5) 医療機器規格(IEC 60601 4th Edition等)への言及
IEC60601準拠の製品のため医療機器メーカー側の適合・文書化・評価の負担を軽減いたします。
※最終的な適合可否は、システムとして実施いただきますようお願いいたします。
6) バックライト、色、交換部品など“運用”を意識した設計
- 青/白などのバックライト調整を用意し低照度環境での視認性を支援
- 表面のシリコーン部は交換可能なため、長期運用・保守性の観点でメリット
- パネルへのスナップイン取り付け(専用工具不要)が可能であり組立性にも配慮

参考リンク(公式):製品紹介ブログ / CliniKey™ 製品ページ
導入検討チェックリスト(設計・評価・量産の視点)
ここからは、設計担当者が「スペックが良さそう」で止まらず、評価と量産を見据えて確認したいポイントです。 入力デバイスは小さな部品に見えて、実は筐体設計・EMC・サービス設計まで影響しやすいので、早めの整理が重要です。
設計(メカ)
- パネル開口寸法と公差:切り欠き形状、パネル厚、取り付け手順を図面に落とし込めるか。
- シール成立条件:IP等級は筐体側の面精度・面圧・固定条件にも依存します。試作で“最悪条件”を確認する。
- 清掃性:周辺に段差・溝・ネジ頭が残らないレイアウトにできるか。
電気・ソフト(インターフェース)
- USB HIDとしての互換性:ターゲットOS、起動シーケンス、電源投入時の認識を確認する。
- EMC/ESDの実装:USB配線の取り回し、筐体グランド、ESD対策(試験環境)を考慮する。
- 誤入力対策:Clean機能の運用手順をUI/IFU(取扱説明)に落とし込めるか。
信頼性・運用(保守)
- 消毒剤リストとの照合:病院側の標準薬剤(部署別)と、評価済み薬剤の範囲を突き合わせる。
- 清拭頻度の想定:1日あたりの清拭回数×年数で、表面劣化と保守(交換)をどう設計するか。
- 交換部品・供給:交換用トップ、ケーブルなどの保守部材の調達性を確認する。
- 規格・文書:適合宣言、試験レポート、ユーザーガイド等のドキュメント入手性を確認する。
想定用途と適合しやすい機器例
パネルマウントで密閉性と清掃性に対応した製品のため、以下のような「筐体一体の操作部」を持つ機器で適合しやすい特徴があります。
- 患者モニタ、ナースステーション端末、病棟向け入力コンソール
- 画像診断・検査装置の操作パネル(暗所運用や長時間操作がある場面)
- 検体検査装置、ラボ機器(薬剤・液体が近い環境)
- クリニック向け処置機器、診察室向け装置(頻回清拭)
- 医療機器OEMのプラットフォーム筐体(派生機種を多く展開する設計)
まとめ
医療機器の入力デバイスは、「消毒できる」「壊れにくい」だけでなく、現場での操作感と誤入力対策まで含めて成立させる必要があります。 そのため、設計終盤で慌てて対策すると手戻りが増えがちです。
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CliniKey™は、薬剤耐性・清掃性・密閉性(パネル実装でのIP67)・打鍵感・医療規格対応といった要件を一体で満たすことを狙った部品として、 医療機器メーカー/医療OEMの入力部設計で検討価値があります。 まずは「自社の消毒運用」「筐体設計でのシール成立」「OS/USB認識」「清掃中の誤入力」までをチェックリストで潰し、試作評価に進めるのが近道です。
※本記事は公開情報に基づく一般的な解説です。最終的な適合性・規格対応・防水等級は、実機構成と評価条件により変わります。導入時は必ず最新資料と試験結果をご確認ください。
お問い合わせ
担当者: インフラビジネス部 平賀
TEL: 080-5083-6593
E-mail: k_hiraga@jepico.co.jp








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